忙しくてあまり休息の時間もとれない。がんばる気持ちはあるのに集中力がついていかない。プレゼンで緊張しすぎて日頃の成果が発揮できない……。仕事をしている人なら、誰もが覚えがあることではないでしょうか?
このような悩みは正しい「呼吸法」を行うだけで解消できるとされているのが医学博士 根来秀行先生です。
近年、呼吸の仕方を変えることで脳やメンタルまでコントロールできることが科学的に解明されてきました。しかも呼吸法は、特別な道具を必要とせず、場所も選びません。今回は『ハーバード&ソルボンヌ大学 根来教授の 超呼吸法』(根来秀行/KADOKAWA)にある10の呼吸法の中から、ストレス解消に役に立つ「呼吸」の効果をご紹介します。
🔴まずは「IT猫背」に要注意!
呼吸は24時間、休むことなく自律神経によってコントロールされています。呼吸が酸素の供給源であることは誰もが知っています。しかし大切なのは日常的に呼吸と呼んでいる「肺呼吸」よりも、むしろ、そのあとに血管内で行われる「細胞呼吸(内呼吸)」なのだそうです。ヒトは、60兆個ほどもある細胞の集合体。その細胞に滞りなく酸素を届け、二酸化炭素を回収する細胞呼吸によるガス交換が停滞すると、とたんに脳は酸欠をおこし、体調は悪化します。ダルい、集中力が続かない…などは、実は細胞呼吸の停滞が原因なのです。普通の筋肉細胞を「1」とすると、脳の神経細胞はその20倍の酸素を摂取しなければならないそうです。
そこでまず気をつけたいのは、「IT猫背」といわれる姿勢です。例えばパソコン、携帯電話やスマートフォンを長時間見るなどの姿勢の積み重ねが猫背につながります。猫背になって呼吸が浅いと、呼吸回数が多くなって二酸化炭素濃度が下がりすぎ、その先の細胞呼吸が十分に機能しなります。呼吸を整えるには姿勢が大切というわけです。
🔴2つの呼吸の仕方
呼吸方法として「腹式呼吸」と「胸式呼吸」があることはご存じの方も多いと思います。2つの呼吸方法はどちらもできることが重要で、それぞれの呼吸の特性があります。
簡単なところで言うと「胸式呼吸」には体を活動的にさせる効果があり、「腹式呼吸」は体をリラックスさせる効果があることです。
「胸式呼吸」は体を活動的にさせるので、運動するときなどは特に必要な呼吸です。しかし、「胸式呼吸」ばかりになってしまうと体が緊張してしまい、特に胸や首周りの筋肉が硬くなってしまう原因となってしまいます。
「腹式呼吸」は、自律神経が集まった横隔膜(自律神経のセンサー)をしっかり動かすことで、交感神経が鎮まり副交感神経が優位になり、心身をリラックスさせるので、体を休めたいときなどに特に必要な呼吸です。
多忙な人ほど陥りやすいのが交感神経優位の生活です。交感神経が上がりっぱなしになることでも細胞呼吸は滞るため、体の修復・再生が進まず、疲れをますますため込むことになります。この悪循環を断ち切るためには、副交換神経のスイッチを入れる呼吸法によるブレークタイムを設けることが欠かせないのです。
🔴ストレス解消の4.4.8呼吸法
ストレスを受けると脳の視床下部が反応し、交感神経が優位となり心拍数や血圧が上昇します。4.4.8呼吸法は、副交感神経にスイッチを入れ、交感神経の暴走をくい止めます。気持ちを手早く落ち着けたいときや、興奮して眠れないときなどの強い味方です。「4秒で吸って4秒息を止め、8秒かけて息を吐く」を4回1セットとして、状況に合わせて2~3セット繰り返します。
【手順】鼻呼吸が基本
- ラクな姿勢をとる
ラクな姿勢をとり、へその上に軽く手を置く(腹部の動きを意識する)
- 準備として、2~3回腹式呼吸し、息を吐ききる
- 4秒かけて息を吸う
- 4秒息を止める
- 8秒かけて息を吐く
このとき、お腹を絞るようなイメージで - 3~5を4回繰り返す
●緊張緩和 ●イライラ抑制 ●不安解消 ●ストレス解消
●脳疲労リセット など
🔴余計なことは考えない!
深い呼吸や、呼吸テクニックの訓練がストレスの軽減に役立つ、とハーバード・メディカルスクールも言っています。そして、呼吸に集中しているときは、呼吸以外のストレスの原因やネガティブな刺激に意識を向けないようにするのがコツです。呼吸のことにだけ意識を向けることです。
呼吸は、自律神経のコントロールを唯一、意識的に行える生理機能。だからこそ呼吸の仕方を変えるだけで、脳疲労やメンタル、ホルモン分泌などまでコントロールが可能になります。つまり、24時間ノンストップで行う呼吸を見直すことによるメリットは、計り知れないといえます。
多忙な人にとって呼吸法は、思い立ったらすぐ実践でき、特別な道具も必要としないので、最適な健康法といえるのではないでしょうか。今回ご紹介した4.4.8呼吸法のほかにも、集中力を高める1:1の呼吸法(胸式呼吸と腹式呼吸の組み合わせ)や、吸った時間の2倍の長さで、息を吐く呼吸法1:2の腹式呼吸法などもあります。
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