エゴ・レジリエンス(Ego-Resilience:略称エゴレジ)は、日々のストレスに直面してメゲたとき、自我egoを調整しバランスをとって元の元気な自分、少しでも気分のいい感じの自分に戻ろうとする力です。誰もが持っている力ですが、これを高めることで「心のしなやかさ」が身につき、ストレスにうまく対応できるようになります。今回は、そんなエゴレジをアップするワークの一つ、「ユーモア」「笑い」の話をご紹介します。

🔴注目される笑いと健康

笑いと健康の関係に詳しい大平哲也・福島県立医科大学教授が世界の主要医学誌を登録するデータベースで「笑い」を含む論文数を調べたところ、82~86年の5年間に27件だったのに対し、2007~11年の5年間には121件と4.5倍に増えたそうです。

このように年々注目度は高まっていますが、笑いが健康によいという「長期間追跡した調査がまだない」ようです。免疫機能の向上ストレスの軽減など短時間で一過性の効果は確かめられても、それが長期間の健康維持にどう役立っているのか、本当に元気で長生きにつながっているのかが調べられていないのです。では、現時点で信頼できる笑いの医学的な効用とは何か。大平教授は笑いの「運動とストレスの解消」の2つの効果を指摘されています。

1.カロリー消化 「ハハハ」と声を出して笑うという行為は、腹筋や呼吸筋などの筋肉を使い、酸素を消費する有酸素運動です。15分笑うと、約20~40 kcalを消費し、10分間のウォーキングに相当するそうです。

2.ストレス解消 一方、笑いが脳内の血流を増やしたり自律神経を安定にしたりする作用は認められています。笑うときは腹式呼吸になり、副交感神経が優位になってリラクセーション効果を導きます。また、大笑いすると、頭の中が一瞬、空っぽになり、ストレスを生む悪循環の思考がいったん遮断されるのです。これが脳内リセット効果です。

元気で長生き研究所の昇幹夫所長は「感情を抑え込まないことが大事」で「笑いをきっかけにして喜怒哀楽を4:1:2:3の比率で過ごせるようにしよう」と話されています。大平教授は「よく笑っている人は、人と話す機会が多い。社会とのつながりがあるかどうかも重要な指標」と話されています。

🔴笑いの「見える化」aH(アッハ)

心から笑っているのか、愛想笑いをしているのか、笑いの種類を客観的に判定する方法を確立しようとする事業もあります。NPO法人プロジェクトaH(東大阪市 代表 池田資尚氏)は、笑いの強さと量を計測する装置の開発に取り組み「笑い声測定システム」(通称:アッハ・メーター)を開発しています。

アッハ・メーターは、顔と腹の筋電位と喉(のど)の振動を測り、笑いの種類に応じて点数化します。単位は「aH(アッハ)」です。

実用化すれば「毎日100aH以上笑う人の平均寿命は85歳」というような分析が可能になると、期待が寄せられています。

 🔴笑いと自然治癒力

医学博士の伊丹仁朗先生は「笑いと自然治癒力」の関係について次のような実験をされています。

吉本興業の協力を得て、大阪のなんばグランド花月」に19人のボランティアに集まってもらい、漫才や新喜劇を見て3時間笑ってもらい、その直前直後の血液を検査し、成分変化を測定してみました。すると、キラー細胞というリンパ球の一種で、がん細胞を攻撃破壊する働きをしているものが、増強されていました。

他に、CD4/8というヘルパーT細胞とサプレッサーT細胞の比率(がんに対する抵抗力)も測定したところ、低すぎる人は高くなり、高すぎる人は正常値の方向に向かうということが分かったそうです。笑いは治癒力を高めることが実験でも確認されたということです。

1分間大声で笑ってみてください。汗が出て胸が軽くなったのを感じると思います。一人で笑うのはちょっと…という方はお友だちや家族を巻き込んでみてもいいですね。人間関係もユーモアが大切です。一緒に笑えるって、それだけでなんだか幸せになるものです。

体と心と脳はつながっています。

エゴレジをアップするためにも、面白アンテナを立てて、いい感度で笑いましょう。笑わせることも刺激になります。